2006年5月23日

提言にあたり

 VHJ研究会は、医療の質や病院経営の質の向上をめざして研究活動を行っている組織です。その研究活動の一つとして、これからのわが国が目指すべき「医療のあるべき姿」について様々な観点から議論を行っています。

 このたび、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案」が国会で審議されているのを機会に、私どもの医療制度改革の考え方を二、三の提言としてまとめてご批判を仰ぐことにいたしました。

 VHJ研究会の会員病院は、医療は公益性が高く、水準の高い医療を提供することは住民の方々に対する責務であると自覚しつつ、日常の医療を行っております。 私どもは、病院は地域に支持され、地域を支援する、地域の公器であると考えます。 皆様が日頃お考えになっていることをお教えいただけますと幸いです。

 VHJ研究会の会員病院は主として急性期の医療を担当しています。外来・入院はもちろんのこと、救命救急医療なども担っています。従いまして、提言は主に急性期医療に焦点を合わしているということをご理解下さい。

 医療の質を向上させるには、医療機関の持っている情報、特に医療の質と安全に関する情報の公開が非常に重要です。私どもは、これからも透明性に十分留意して情報公開を行ってまいります。
                                 
 皆様が安心して良質な医療を享受されるには、医療制度の整備が全国に実施されるとともに、地方や地域の実態(地域特性)を重視した、しなやかな体制作りが重要であると考えます。それには住民の考えや意見を反映させて行く政策が行政には要請されます。

提言の概要

  1. 「医療の公益性」を適切に評価する。「公益性の高い」医療を重視する。
  2. 医療計画の策定にあたっては、多くの関係者が参画するとともに、決定過程を透明にするなどの手段を講じる。
  3. 地域連携を整備する。かかりつけ医・地域支援病院のあり方を検討する。
    急性期医療・救急医療が抱えている問題を解決する。
    生活習慣病対策を推進する。
  4. 人的資源の効果的な活用によって医師の偏在問題に対処するとともに、医師が専門性を発揮して診療に専念できる体制を整備する。
     

医療改革を進めるための提言

?.一般的なこと

1.「医療の公益性」の評価を適切に行う。

  1. 一律に規程される「公益性」と、地域性を考慮した「公益性」を区別して評価する。
  2. 公益性の高い医療を担っている医療機関を十分に評価する。
    評価にあたっては設置母体を問わず、実際に担っている医療の実態や内容による評価を重視する。
  3. 公益性の高い医療法人は、病院会計準則による等、透明性の高い会計処理を行う。

2.公益性の高い医療(例 救急医療)、急性期入院、整備された地域連携医療など、医療機関の機能分化を確立した医療体制を構築するとともに、機能に応じた診療報酬を設定する。

3.健康増進に努力している人に報いるシステムを社会保険の一部に導入する。

  1. 現行の制度は日常、「健康管理をしている人」が他の人の医療費を負担するような構図も含まれている。このため、「公平性」を謳うとともに、生活習慣病の予防・治療の手段として、健康増進の努力に対するインセンティブを与える仕組みを公的保険の一部に導入する。ただし、ぺナルティーを科すものであってはならない。
  2. 導入の対象は現役世代ないしは社会保険加入時の若年者とする。

4.たばこ税、酒税の一定部分を医療費に充当する。
 

?.医療計画

1.医療計画の策定にあたっては計画の決定過程を住民に公開する。

  1. 行政が設置する各種委員会・医療審議会は公開とする。会議に提出された資料・議事録(発言の全て)などはリアルタイムに公開する。
  2. 住民や医療機関等の参画を積極的に行う。現行では行政や国公立医療機関、職能団体の代表を中心に委員構成がなされている傾向が見られるので、構成メンバーを一般住民や民間医療機関等にも広範囲に求める。
  3. 計画策定に資するためパブリックコメントを公募する。

2.医療計画の実施状況などの評価、審査は公正な第三者に委ねる。

  1. 定期的に適格性を評価あるいは審査して、適性を欠くものを排除する。
  2. 医療計画では既得権が生じたり、擁護するようなシステムは排除する。
     

?.地域連携・地域医療支援病院

1.地域連携はその基本を「地域完結型」として整備する。

  1. 地域連携参加医療機関の役割などの周知に努める。
  2. 連携についてのピアレビュー、住民評価を実施する。
  3. 地域連携クリティカルパスを作成して共有する。
  4. システムの構築、維持に要する費用の公的財政支援制度を確立する。

2.かかりつけ医・地域医療支援病院の定義と機能などを明確にする。

  1. かかりつけ医の定義と地域連携における役割を明示する。
    かかりつけ医は、できるだけ早期に家庭医(専門医)養成制度を確立して、家庭医として法定化する。
  2. 診療所においては、かかりつけ医はその他の一般医と区別され、医療計画や診療報酬上の優遇を受ける。将来、在宅療養支援診療所による診療は法定化された家庭医によって行われる。
  3. 地域医療支援病院の要件は、現に地域医療を支援している病院の実情を十分に考慮するとともに、地域の実態を反映するものに改める。  
    地域の特性を重視した真に地域の医療を支援している医療機関が指定されるような要件を設定する。
  4. かかりつけ医・地域医療支援病院の認定は更新制とする。
     

?.急性期医療・救急医療

1.急性期医療を担う医療機関には「医療の質の確保」を義務付ける。

  1. 日本医療機能評価機構の評価および付加機能審査等、第三者機関の評価を受ける。
  2. 診療能力や診療実態により、施設基準や医師定員を設定して病院機能を評価するシステムを確立する。評価は定期的に実施して医療の質の向上、維持を図る。
  3. 急性期病院は全てDPC(対象)病院とする。DPCには、アップコーディング、在院日数の調節が可能などの問題も指摘されているが、精緻な検討を行って制度の定着と拡大を図る。

2.救急医療体制は「選択」と「集中」をキーワードとして早急に見直す。

  1. 現行の救急医療システムは、地域住民の要請に応えた運用がなされていないことがあり、病院群輪番方式が崩壊している地域も見られる。輪番制を強化するか、救急救命センター(特に外来)を拡大するか、それぞれの地域の事情を十分に精査して救急医療体制を見直す。
  2. 救急搬送の応需率、救急搬送患者の治療、入院の実態によって医療機関を格付けして評価する。
  3. 専門医療別救急センター(小児、外傷、熱傷、産科)設置の是非を検討する。この際、特定機能病院に中心的な任務を課すとともに設置する病院への財政支援を考慮する。
  4. 24時間救急対応(24時間稼動)の医療機関とそれ以外の医療機関を公益性の観点から区別する。24時間救急対応の医療機関は、医療計画や診療報酬で評価するとともに、財政支援を考慮する。
  5. 救急医療機関では、当日の担当医師名や医療スタッフを明示するとともに、診療対象疾患などの情報を公示することを義務付ける。
  6. 地域によってはドクターヘリを導入することによって、救急システムの整備を図る。住民の利便性を重視して、県域・医療圏を越えた救急医療システムも検討する。
     

?.医師の需給・偏在

1.勤務医の減少を食い止める政策を実施する。

  1. 医療機関の機能分担の促進、かかりつけ医の法定化によって人的資源を有効に活用する医療政策を策定する。
  2. 勤務医と開業医との間にある収入(給与)、労働条件の格差を是正する。
    勤務医はその専門性によって正当に評価される。
  3. 開業医は制度上、かかりつけ医とその他の一般医とに区別する。
  4. 公益性の高い医療を担当する医師を評価する。
  5. 機能、役割、専門性、公益性に十分配慮した診療報酬体系を確立する。
  6. 医師が専門性を十分発揮して診療に専念できる体制を創る。
    助産師、看護師、各技師(士)、消化器内視鏡技師、診療情報管理士等の充実と医師権限の一部を委譲することを検討する。
    新しい資格(麻酔看護師など)の検討を行う。

2.医師総数についの議論を進める。

医師総数のあり方については、1.の政策を実施するとともに議論を進めて行く。
 

?.生活習慣病対策

1.生活習慣病の予防には個人や保険者に対するインセンティブを与える手段を導入する。

2.食や運動を中心とした生活習慣病の予防活動を強化する。地域連携における重点事業に位置づける。医療関係者だけではなく、教育関係者などとの協力により実施する。
                                         
3.教育啓蒙活動を活発にする。特に児童生徒に対する教育を強化する。

4.予防活動は持続することが重要である。このため、公的補助制度を充実させるとともに、ピアレビュー、第三者評価を実施して効果のあるものとする。
 

?.その他

1.DPCについては今後さらに臨床的な検討を加え、精緻化する作業が重要である。あわせて、急性期医療の機能向上を促すため、より急峻な逓減制の導入やアウトライヤー処理と組み合わせた一件あたり包括性への移行の是非を検討する。

2.レセプトの電子化、オンライン化を進めるため、電子点数表の普及と充実、オンライン電子請求に対するレセプト様式の改革に早急に取り組む。

3.医師養成に関して、専門分化の進行などにより医学部定員を増加させるべきであるという意見もあるので、医療体制の確立後に改めて検討を行う。

4.国公立・私立を問わず、全ての病院は、開設主体の相違によって医療提供や診療報酬などで区別されてはならない。公的支援を実施する場合には、公的支援の理由、規模、対象、期間などに十分の妥当性と説得力がなければならない。

5.診療報酬制度のあり方については、医師の技術レベルや医療機関の機能分担により適用範囲・点数単価を設けるなどいろいろの観点から多様な検討を行う。

この提言に関するご意見・お問い合わせ先

VHJ研究会 

VHJ機構
http://www.vhj.jp/
(VHJ研究会は事務をVHJ機構に委託しています。)

 

 

 

 

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